Figmaは、AIを活用したアプリデザイン生成機能「First Draft」を再びリリースした。以前、この機能はAppleの天気アプリに酷似したデザインを生成したことで一時停止されていたが、改良を経て復活した形だ。

新しい「First Draft」は、4つのライブラリから選択できるなど、ユーザーのニーズに応じた柔軟なデザインを可能にしている。Figmaは、この機能が独自のデザインシステムを活用し、ユーザーの入力に基づいてカスタマイズを行うとしている。

Apple模倣問題からの再出発

Figmaは2024年6月に「Make Designs」と呼ばれるAIを活用したデザイン支援機能を発表したが、初期ユーザーからのフィードバックで問題が浮上した。生成された天気アプリのデザインが、AppleのiPhone天気アプリに酷似していることが判明し、Figmaはこの機能を一時停止せざるを得なかった。Figmaは、AIモデルがユーザーデータを使用していないことを主張したが、Appleのデザインを意図せず模倣してしまったことは問題視された。

Figmaはその後、この機能の改善に取り組み、徹底的なテストと分析を行った。結果、機能を改良し、名前も「First Draft」に変更して再リリースすることを決定した。今回の再リリースにより、デザインのプロセスにおけるAIの役割はさらに進化し、ユーザーにとって使いやすい環境が整えられた。

この出来事は、AIがデザイン分野においてどのように活用されるかという課題を浮き彫りにした。特に、クリエイティブなプロジェクトにおけるオリジナリティとAI生成のバランスが求められる中、Figmaはその挑戦に向き合い、新たな方向性を提示している。

「First Draft」の新機能と改善点

再リリースされた「First Draft」は、従来の機能に加えていくつかの重要なアップデートを導入している。ユーザーは、4つのライブラリから自分のニーズに応じたデザイン要素を選択できるようになった。これにより、ワイヤーフレームのようなシンプルな要素から、高精細なビジュアル要素まで、幅広いデザインスタイルを試すことが可能である。

特に注目すべき点は、このライブラリの柔軟性により、デザイナーが初期段階で大きなビジュアル決定を行わずに、試行錯誤を重ねられる点である。ユーザーが最初に試すデザインは「ラフ案」として機能し、Figmaの他のAIツールと連携して、プロジェクトの進行に伴い徐々に詳細なデザインへと進化する。

また、視覚的な検索機能も新たに追加されており、既存のFigmaファイルやコンポーネントをプロンプトや画像を使って検索できる。この機能により、過去のデザイン資産を活用しやすくなり、効率的なデザインワークフローを実現している。

AIがデザインの初稿をサポートする仕組み

「First Draft」が提供するAIの仕組みは、ユーザーが入力したデザイン目標に基づいて、独自のデザインシステムコンポーネントを選択・配置・カスタマイズするというものである。このプロセスには、Figmaが保有するプロプライエタリなモバイルおよびデスクトップ向けのデザインシステムが利用されており、AIはそのデータを元に初期のデザイン案を生成する。

具体的には、AIが設計目標を入力されたプロンプトを解析し、それに応じたデザインコンポーネントを組み合わせて、初稿となるデザインを作成する。このAIモデルには、OpenAIのGPT-4やAmazon Titanといった、既存のAI技術が使われている。これにより、デザイナーは手動でゼロからデザインを構築する手間を省き、より効率的にプロジェクトを進めることができる。

重要な点は、このAIがユーザーの過去のデザインデータを使用しないことだ。これにより、プライバシーやデータの所有権に関する懸念を払拭し、安心して利用できる仕組みが整えられている。

ユーザーに広がるデザインの可能性

「First Draft」の再リリースにより、Figmaユーザーはさらに多くのデザインの可能性を手に入れることになった。特に、初心者から経験豊富なデザイナーまで、幅広い層がこの機能を活用できる点は大きな利点である。AIが初稿を生成することで、時間を節約し、より創造的なプロセスに集中することが可能となる。

さらに、視覚的な検索機能を活用することで、過去のプロジェクトからの再利用や、新しいデザインのアイデアを素早く見つけることができる。これにより、チーム間でのコラボレーションも効率化され、プロジェクトのスピードアップに貢献している。特に、大規模なデザインプロジェクトでは、このようなAIの支援が重要な役割を果たすだろう。

今後も「First Draft」をはじめとしたAI機能の進化は、デザイン業界において大きな影響を与えると考えられる。