Apple Watch Series 10は、これまでのモデルから進化を遂げ、特にディスプレイとデザインにおいて顕著なアップグレードが施された。新たな42mmと46mmサイズのケースは、薄くスリムになり、手首にしっかりとフィットする。だが、一部のユーザーにとって悩みの種であったバッテリー寿命に関しては、今回も根本的な改善は見られなかった。

シリーズ最大のディスプレイと洗練されたデザイン

Apple Watch Series 10は、これまでのモデルに比べて、特にデザインとディスプレイにおいて顕著な進化を遂げている。新たに登場した42mmと46mmのサイズは、Appleの定番であった41mmと45mmのケースよりも一回り大きくなり、視認性が格段に向上した。また、ケース自体もこれまで以上に薄くなり、よりスリムな印象を与える。手首にフィットする形状は、日常使いでも違和感なく装着でき、ユーザーの利便性を高めている。

ディスプレイは、Apple Watch史上最大の「アクティブディスプレイ」面積を誇り、これにより文字やグラフィックの視認性が大幅に向上した。さらに、OLEDディスプレイの採用により、角度による輝度低下が減少し、日中の屋外でも視認性が高い。新しいカーブ状のディスプレイデザインにより、画面の端まで表示領域が拡張され、情報がより一層効率的に確認できるようになっている。

Appleはこのデバイスに新しいウォッチフェイスも追加しており、「Flux」や「Reflections」といったデザインが、時刻や通知を美しく表示する。特に「Flux」は、秒針の動きに合わせて色が変化するというユニークな演出が特徴で、ディスプレイの進化をより実感させるものである。

速くなった充電速度と変わらぬバッテリー寿命

Apple Watch Series 10では、充電速度が大幅に向上しているものの、バッテリー寿命に関しては期待されていた大幅な改善は見られなかった。Appleは公式に18時間のバッテリー持続時間を謳っているが、これは前世代からの引き継ぎであり、多くのユーザーが望んでいた「長時間のバッテリー寿命」という要望には応えられていない。しかし、バッテリーの持続時間は個体差があるようで、レビューによれば24時間を超えて使用できるケースもある。

充電速度については顕著な進化が見られ、専用の高速充電ケーブルを使用することで、わずか50分以内でフル充電が可能である。たった10分の充電でバッテリー残量が27%まで回復し、30分で82%まで充電できるため、短時間の充電で長時間の使用が可能となっている。この高速充電機能は、特に就寝前に充電を忘れた場合などに大変役立つ。

一方で、Apple Watchはバッテリー寿命に関してライバル製品にやや遅れを取っており、他のスマートウォッチが2日以上のバッテリー寿命を実現している中、改善が望まれる部分である。

高度な健康追跡機能:睡眠時無呼吸症候群の検出

Apple Watch Series 10は、従来の健康管理機能に加えて、新たに睡眠時無呼吸症候群の検出機能を搭載している。この機能は、夜間に呼吸の乱れを監視し、月ごとにレポートを生成することで、ユーザーに潜在的な健康リスクを知らせる。睡眠中の呼吸障害が一定以上検出された場合、Apple Healthアプリを通じて通知が送られ、医師への相談を促すPDFレポートも生成される。この機能は、睡眠時無呼吸症候群の初期症状を把握するための強力なツールであり、特に症状に気づいていないユーザーにとっては非常に有用である。

また、Series 10には「Vitals」アプリが追加され、睡眠時の心拍数や呼吸数、体温、睡眠時間といったデータをまとめて確認できる。これにより、ユーザーは自分の健康状態を一目で把握し、異常があった場合にはすぐに対応できる仕組みが整っている。アメリカ国外では血中酸素濃度(SpO2)の監視も可能であるが、特許問題の影響で、アメリカ国内ではこの機能はまだ利用できない。

このように、Apple Watch Series 10は、ユーザーの日々の健康をより細かく追跡する機能を充実させている。

ワークアウト機能の強化と使いやすさ

Apple Watch Series 10のワークアウト機能は、ユーザーのフィットネスライフをより豊かにするために強化されている。watchOS 11のアップデートにより、ユーザーはアクティビティリングを自由にカスタマイズできるようになった。これにより、病気や休養日にはリングの進行を一時停止したり、曜日ごとに目標を変更することが可能となった。たとえば、特定の曜日に負担を減らしたい場合、その日の目標を柔軟に調整できる。

また、Series 10では、新たなワークアウトアプリの改良が加えられ、80以上のアクティビティタイプに対応している。特に屋外でのワークアウトでは、オフラインマップをダウンロードしてスマートフォンなしで経路を確認できる機能が追加されており、トレイルランニングやサイクリング時に役立つ。さらに、新たな「Effort Rating」機能では、ワークアウト中の心拍数を基に運動の強度を評価し、1から10のスコアでフィードバックを提供する。これにより、ユーザーは自分の運動量を詳細に把握できる。

また、「Training Load」機能では、運動の持続時間とEffort Ratingを掛け合わせたデータを提供し、長期的なトレーニングの負荷を把握できる。これにより、ユーザーは自分のフィットネス目標に対する進捗を管理しやすくなった。