Appleが新たにゲーム専用のアプリストアを立ち上げる可能性が報じられている。この動きはEpic Gamesとの争いにおいて、Appleがゲーム市場でのさらなるシェア獲得を狙っているものとみられる。ゲームセンターの一部機能を統合し、App StoreやApple Arcadeからのタイトルを提供する計画だという。

新たなゲームストアの概要と機能

Appleが計画中とされる新しいゲーム専用アプリストアは、既存のApp Storeとは異なる独自のエコシステムを構築するものである。このストアは、ユーザーにゲームの推奨や友人リスト、さらに過去のプレイ履歴に基づいたゲームの提案を行う機能を搭載する予定だ。また、Achievement風のチャレンジやリーダーボードを備え、プレイヤー同士が競い合える仕組みも提供される見込みである。

この新ストアの一部機能は、Appleの「ゲームセンター」から引き継がれるが、完全な置き換えではない。むしろ、プロファイルが新たなゲーム専用ストアに統合される形となる。iMessageやFaceTimeを利用したゲーム内のコミュニケーション機能も検討されており、家族やカジュアルゲーマーにとっては便利な機能となるだろう。しかし、コアゲーマーは既にDiscordなどのプラットフォームを使用しているため、どの程度利用されるかは未知数である。

Epic Gamesとの法的争いの背景

AppleとEpic Gamesの関係は、長年にわたり緊張状態にある。きっかけとなったのは、EpicがAppleのアプリ内課金システムを回避し、自社独自の決済システムを導入したことであった。これに対し、AppleはEpicの人気ゲーム『Fortnite』をApp Storeから削除するという厳しい措置を取った。Epicはこれを不当とし、反トラスト法に基づきAppleを訴えた。

特に問題視されたのは、AppleがApp Storeにおいて30%の手数料、いわゆる「Apple税」を課している点である。この手数料を巡る法的争いは、長期にわたるものとなり、EpicはAppleを独占企業と批判してきた。最終的にEpicの訴えは一部認められたものの、Appleが完全に敗訴したわけではなく、依然として両者の関係は冷え切ったままである。この状況が、新たなゲーム専用ストアの開発に影響を与えている可能性も高い。

Appleのゲーム市場への進出と戦略

近年、Appleはゲーム市場への進出に積極的な姿勢を見せている。特にiOS、iPadOS、macOSを横断する形でのゲームプレイを推進しており、これにより同社のエコシステム内でのゲーム体験を強化しようとしている。今年初めには、注目の新作ゲーム「Frostpunk 2」などを紹介するイベントを開催し、Appleのデバイス上で高品質なゲームが動作することをアピールした。

また、iOS 18では「Game Porting Toolkit」を強化し、開発者がmacOS向けのゲームをiOSへと簡単に移植できるよう支援する仕組みを導入した。このような戦略の背景には、Appleが単なるハードウェアメーカーとしてだけでなく、ゲーム業界でもプレゼンスを高めたいという意図があると考えられる。WindowsベースのPCに比べ、Appleプラットフォーム上で利用可能なゲームはまだ少ないが、その数は徐々に増加している。

他社(Microsoft、Google)との競争激化

Appleのゲーム市場への進出は、MicrosoftやGoogleとの競争を激化させることになる。特にMicrosoftは、既に「Xbox App」や「Xbox Cloud Gaming」を通じてモバイルゲーム市場での足場を築いている。Appleの新たなゲームストアは、この動きに対抗するものであり、Epic Gamesとの争いだけでなく、Microsoftとの市場競争を意識したものであることは明白である。

一方、Googleもまた、モバイルOSでのアプリストアの開放を進めており、サードパーティによるアプリストアの利用を許容する方向に舵を切っている。これにより、Google Playストアを利用せずに独自の決済システムを導入できるようになる可能性がある。Appleもこの流れを無視することはできないが、少なくとも現時点では、自社エコシステム内での閉鎖的な戦略を維持している。