2024年、スマートフォン市場は過去2年間の低迷を乗り越え、大きな回復を見せると予測されている。IDCの調査によれば、世界全体の販売台数は前年比6.2%増の12億4,000万台に達すると見られるが、この成長はAppleのiPhoneには反映されない。iPhoneの販売増加率はわずか0.4%にとどまり、全体のトレンドに比べ控えめな伸びとなる見込みだ。

それでも、Appleは利益率で市場をリードする立場を維持する。iPhoneの平均販売価格が1,000ドルを超える一方で、Androidスマートフォンの平均は295ドルと大きく差が開いている。今後の市場成長は、新興市場での需要や折りたたみ式スマートフォンの進化、5G普及の進展に左右されると見られている。Appleの次なる戦略が、停滞する成長にどのように影響を与えるかが注目される。

iPhone販売停滞の背景に潜む「プレミアム化」の影響

iPhoneの販売増加率が控えめにとどまる理由として、Appleの「プレミアム化」戦略が注目される。IDCのデータによると、iPhoneの平均販売価格は1,000ドルを超えており、他ブランドの約3倍の価格帯を維持している。この高価格戦略は、収益性を重視するAppleにとって有利である一方、特定の市場では消費者の手の届かない存在となるリスクも伴う。

特に、新興市場では価格競争が激化しており、Androidスマートフォンが圧倒的なシェアを誇る。折りたたみ式モデルや5G対応機種が価格帯を下げて市場参入を図る中、Appleが依然として高価格を維持している点が、販売成長の停滞につながっている可能性が高い。また、経済的な不透明感が続く中で、消費者が買い替えを控える傾向も影響を与えていると考えられる。

しかし、Appleが価格の高さに見合う革新性を提供し続ける限り、プレミアム市場での地位は揺るがない。iPhoneのブランド価値を維持しつつ、より多様な層を取り込む戦略の変化が鍵を握るだろう。

AI技術がスマートフォン市場に与える影響

スマートフォン市場において、AI技術は重要なテーマでありながら、消費者の購買行動に大きな影響を与えていないというのがIDCの見解である。Appleをはじめとする主要メーカーは、AIを搭載した機能を競うように展開しているが、それが購入を促進する決定的な要因にはなっていない。

ナビラ・ポパル氏のコメントによると、AIが市場で大きな成功を収めるためには、消費者にとって「必須」と感じさせる機能を実現する必要があるという。例えば、Appleが導入を進める「Apple Intelligence」のように、日常的な利便性を高める実用的なAIが普及すれば、購買意欲を刺激する可能性がある。

一方、AIは製品の価格を押し上げる要因ともなり得る。この点で、各メーカーがどのようにAIを活用し、消費者に価値を提供するかが課題となる。AI技術が進化するにつれ、スマートフォン市場は新たな競争フェーズへと突入するだろう。

中古スマホ市場の拡大とその課題

IDCの報告では、中古スマートフォン市場の台頭が今後の成長に影響を与える重要な要因とされている。多くの消費者が新型デバイスではなく、中古端末を選ぶことでコスト削減を図る傾向が強まっている。これは特に先進国で顕著であり、デバイスの耐久性が向上した結果、消費者が端末をより長期間使用するようになったことが背景にある。

中古市場の成長は環境面でも評価されており、循環型経済を促進する一方で、新品販売の成長を制限する要因にもなり得る。しかし、リユース市場の品質保証やセキュリティ面での課題が依然として残っている。これらの問題が解決されれば、中古市場はさらに活性化し、新たな消費者層を取り込む可能性がある。

メーカーにとっては、中古市場に対応したビジネスモデルの開発が急務となるだろう。AppleのTrade-Inプログラムなど、既存の端末を下取りに出し新型デバイスを割引購入できる仕組みは、一例として注目に値する。今後、このような取り組みが業界全体に広がるかが見どころである。