サムスンがウェアラブル市場で前年比24.3%という成長を遂げ、Galaxy Watch 7やWatch Ultraなどの新モデルが注目を集めた。販売台数は1,150万台、市場シェアは8.3%に達し、価格競争力のあるGalaxy Fit 3が存在感を示した。しかし、世界スマートウォッチ市場では4位に甘んじ、トップ争いからは一歩後退している。
一方で、最大のスマートウォッチベンダーとなったファーウェイは、2,360万台を出荷し16.9%の市場シェアを確保。Appleが16.2%で2位、Xiaomiが14.7%で3位に続く形となった。2024年第1~第3四半期のウェアラブル市場全体では、世界出荷台数が前年比1.0%減少したが、中国市場の成長が突出している。サムスンの次なる一手が、今後の競争で鍵を握ると言えるだろう。
サムスンの成長を支えたモデル戦略と価格競争力
サムスンが前年比24.3%の成長を遂げた背景には、製品戦略の巧妙さがある。特に、Galaxy Watch 7やWatch Ultraといった新モデルは、高性能を求めるユーザー層を魅了し、進化したセンサー技術やバッテリー性能が評価された。また、Galaxy Fit 3のような低価格帯のデバイスが、コストパフォーマンスを重視する消費者層に支持され、幅広い市場をカバーする結果となった。
しかし、こうした戦略にも課題が残る。市場のシェア8.3%という数字は、確かに成長を示しているが、競合他社の存在感には及ばない。サムスンの価格競争力は一定の評価を得ているものの、Appleのようなブランド力やファーウェイのようなアジア市場での圧倒的な強みには今後の対策が求められる。さらに、製品ラインの差別化とマーケティング戦略の強化が、次なる成長を実現する鍵となるだろう。
中国市場の急成長とサムスンの出遅れ
2024年の第1~第3四半期において、中国市場は前年比23.3%の増加を記録し、3,290万台のウェアラブルデバイスが出荷された。これは世界のウェアラブル市場が全体で1.0%減少している中で、非常に特異な動きといえる。ファーウェイがこの地域で16.9%の市場シェアを握り、圧倒的なリーダーシップを発揮している背景には、中国国内でのブランド信頼性と販売ネットワークの充実がある。
一方、サムスンの市場シェア拡大は限定的であり、地域に特化した戦略の不足が課題として浮き彫りになっている。特に、競合が地域ごとの特性に合わせた製品展開を行っている中で、サムスンがグローバルな一貫性を保ちながらローカル市場へのアプローチを強化できるかが問われる。中国市場での足場を固めることは、世界全体での競争力向上に直結するだろう。
世界市場の縮小と新たな競争の兆し
IDCのレポートによると、2024年第1~第3四半期における世界のウェアラブル市場は1億3,900万台の出荷にとどまり、前年比でわずかに1.0%減少した。特にスマートウォッチの出荷台数は1億1,220万台と3.8%減少しているのに対し、リストバンド製品は前年比12.7%増加し、2,680万台に達した。このデータは、よりシンプルで低価格なデバイスに対する需要が高まっている可能性を示唆している。
この変化は、サムスンを含む主要プレイヤーにとって戦略転換の必要性を意味する。スマートウォッチ市場の競争が成熟化する中で、リストバンド製品の分野で新たな成長を追求する動きが加速するだろう。また、出荷台数減少の中で他社との差別化を図るには、革新的な技術やエコシステムの強化が求められる。サムスンがこの波をどう乗り越えるかが、次世代のウェアラブル市場における立ち位置を決定づけるだろう。