フルオロエラストマー製のスマートウォッチバンドに含まれる化学物質が、健康に影響を与える可能性が指摘されている。非営利団体が発表した研究では、一部のバンドに肝臓や甲状腺へ悪影響を及ぼす可能性があるPFAS化合物が含まれていると報告された。

これを受け、AppleやGoogleは製品の安全性を強調し、PFAS除去への取り組みを進めている。一方で、ブランド間での対応差や科学的検証の限界もあり、消費者の間で不安が広がっている。

フルオロエラストマーの快適さと潜むリスクの背景

フルオロエラストマーは、スマートウォッチバンドの素材として人気が高い。

耐久性、柔軟性、防水性に優れ、日常的な使用にも適しているため、AppleやGoogle、Samsungなど主要ブランドが採用している。一方で、American Chemical Societyが公開した報告書は、フルオロエラストマーに含まれるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物)やPFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)といった化学物質が健康リスクをもたらす可能性を示唆している。

この報告書によると、PFAS化合物は長期間体内に蓄積し、肝臓や甲状腺への影響、さらには癌リスク増加を引き起こす可能性があるとされる。

ただし、この研究では調査対象のバンドが具体的にどのブランドの製品であるか明らかにされておらず、消費者は安全性を自己判断する必要に迫られている。研究で用いられた試験方法には精密な分析技術が採用されているが、それが日常使用時の皮膚への影響を正確に反映しているとは限らない点も指摘されている。

このように、フルオロエラストマーは利便性と潜在的なリスクを併せ持つ素材であり、その扱い方が消費者の健康に影響を及ぼす可能性がある。


ブランドごとの対応差が示す製品安全への姿勢

AppleやGoogleは、公式発表を通じてバンドの安全性を保証している。Appleは、10年以上前から製品や製造プロセスからPFASを排除する取り組みを開始しており、代替素材の開発に成功したことを明らかにしている。

Googleも、Pixel Watchのバンドが業界基準を満たし、法規制を超えるPFAS制限を実施していると説明している。一方、SamsungはPFAS削減への取り組みを進めているものの、完全排除の目標時期を数年後としている点で、対応の遅れが指摘されている。

これらの違いは、企業の製品安全への姿勢を反映しているともいえる。AppleやGoogleが進取の姿勢を見せる一方で、他のブランドは対応が不十分と捉えられる可能性がある。消費者としては、製品選択時に企業の姿勢や取り組み状況を確認し、リスクの少ない選択をすることが求められるだろう。また、フルオロエラストマー以外の素材、例えばシリコンや金属、革製のバンドを選ぶことも有効な選択肢となりうる。


消費者に求められる判断と今後の課題

現時点でPFASやPFHxAの皮膚吸収がどの程度健康リスクをもたらすのか、科学的な結論は出ていない。American Chemical Societyの報告書も、この点についてはさらなる研究が必要であると指摘している。ただし、日常的にスマートウォッチを長時間装着することで、化学物質が皮膚を通じて体内に吸収される可能性が示唆されている以上、消費者が注意を払うべき事実であることは間違いない。

特に、発汗や運動による摩擦が化学物質の移行を促進する可能性があるため、長時間の使用を控える、適切な清掃を行うといった対応が重要になる。また、製品情報をよく確認し、公式に安全性が保証されているバンドを選ぶこともリスク軽減に役立つ。

今後、業界全体でPFASを含む有害物質の排除に向けた取り組みが進むことが期待されるが、規制や研究の進展を待つだけでは不十分である。消費者は製品の素材や安全性に関心を持ち、企業に対して透明性を求める姿勢を持つ必要があるだろう。