AppleがApp Storeの利益率について「75%以上」とする専門家の推定を否定し、「正確な利益率を知らない」と主張した。この発言は英国での独占禁止訴訟の中でなされたもので、AppleはiPhoneアプリ販売における市場支配と過剰な手数料が問題視されている。訴訟の中心には、公式App Storeを通じたアプリ販売の仕組みがあり、開発者や消費者に影響を与える結果となっている。

独立専門家の報告では、App Storeの利益率は75%から78%に及ぶと推定されているが、Appleは「間接費を特定サービスに割り当てるのは不正確である」として、これを明確に否定している。だが、業界最大級の企業が自社の主要事業の収益性を把握していないとの主張は疑問を呼び、裁判の行方を左右する焦点となっている。

Appleが直面する英国独占禁止訴訟の背景と争点

Appleが英国で直面する独占禁止訴訟の中心には、同社がApp Storeを通じてiOSアプリの販売を独占している点がある。この独占構造は、開発者が公式のApp Storeを経由しなければアプリやアプリ内コンテンツを提供できない仕組みから生まれた。結果として、Appleは自社が設定する手数料率を事実上強制できる立場にある。これらの手数料率は最大で30%にも達し、開発者や消費者にとって大きな負担となっている。

特に注目されるのは、Appleがこうした構造によって高い収益性を維持しているという主張である。独立専門家による調査では、App Storeの利益率が75%以上とされ、一般的なプレミアムビジネスの水準を大きく上回っている。この数字が事実であれば、Appleの市場支配が不当に高い利益をもたらしている可能性を示す証拠となり得る。

しかし、Appleはこうした主張を一貫して否定している。同社は利益率について「知らない」という立場を取り続けており、正確な収益分析ができない理由として「間接費用の正確な割り当てが不可能である」ことを挙げている。この点が争点となり、裁判の進展に影響を与えるとみられる。


「知らない」という主張の真意:データ管理の疑問

AppleがApp Storeの利益率を「知らない」と主張する背景には、同社のデータ管理に対する疑問が浮かび上がる。巨大な企業規模を持つAppleが、年間数十億ドルの収益を上げる事業の利益率を把握していないという主張は、表面的には信じがたい。これは、裁判においてAppleが不利な情報を隠しているのではないかという疑念を生んでいる。

Financial Timesによる報道では、Appleの新任CFOであるKevan Parekh氏が「間接費を特定サービスに割り当てることは主観的であり、不正確である」と証言している。この説明が事実であるならば、Appleが故意に利益率の把握を避けている可能性もある。特に、利益率が75%以上であることが公に認められれば、独占禁止訴訟における同社の立場がさらに弱まることは明白だ。

このような態度は、Appleが透明性よりも法的リスクを回避することを優先しているのではないかという批判を招いている。同時に、企業倫理や責任ある経営のあり方に対する疑問も提起している点が興味深い。


独占構造の未来:Appleへの圧力がもたらす可能性

Appleを取り巻く独占禁止訴訟の波は、同社の事業モデルそのものに大きな影響を及ぼす可能性がある。英国では、開発者や消費者を代表する複数の訴訟が進行中であり、これらが成功すれば、Appleは公式App Storeを唯一の流通チャネルとする現在のモデルを再考する必要に迫られるだろう。

すでに欧州連合(EU)では、デジタル市場法(DMA)の導入により、Appleはサードパーティストアや外部決済システムの利用を認める方向に動きつつある。一方、米国でも規制強化の議論が進んでおり、これが英国での訴訟結果に影響を与える可能性がある。こうした外部圧力は、Appleの市場戦略やアプリエコシステムに大きな変革を促すかもしれない。

ただし、Appleが強大なブランド力とエコシステムを持つ以上、根本的な構造変化が実現するまでには時間がかかる可能性が高い。一方で、開発者やユーザーにとって公平な市場環境を求める声は今後も高まるだろう。この流れが最終的にどのような形で決着するのか、世界中のテクノロジー業界が注目している。