Appleが開発を進めていた次世代CarPlayの導入が当初の予定より遅れることが明らかになった。当初、2024年に登場するとされていたが、Appleは正式なリリース時期を明言せず、発表の場も設けていない。これは、自動車メーカーとの統合プロセスに時間を要している可能性がある。

次世代CarPlayは、インストルメントクラスターや助手席ディスプレイなど、複数のスクリーンを統合する設計が特徴だ。また、エアコンやラジオといった車両の基本機能にもアクセス可能となる。このシステムの採用に関しては、ポルシェやアストンマーティンなどのメーカーが関与していたが、現時点で具体的な展開スケジュールは不透明なままだ。

Appleは、消費者のCarPlay依存度が高まっていることを把握しており、自動車メーカーとの連携を強化する方針を示している。米国では新車の98%以上がCarPlayに対応し、購入時の決定要因にもなっている。今後の動向は、WWDCなどの公式イベントで発表される可能性が高い。

Appleの沈黙が示す次世代CarPlayの課題

Appleは次世代CarPlayの導入について、昨年からほとんど公式な発表を行っていない。2022年のWWDCで発表されたこの新システムは、センターディスプレイだけでなく、デジタルメータークラスターや助手席スクリーンにも統合される予定だった。しかし、Appleが直近で発表した声明では、具体的なリリース時期について明言されておらず、当初計画されていた2024年導入のスケジュールも不透明なままである。

この遅れの背景には、自動車メーカーとの連携に関する課題がある可能性が高い。次世代CarPlayは従来のシンプルなスマートフォンミラーリング機能を超え、車両のコアシステムと深く統合される設計だ。

Appleは複数のメーカーと協力して開発を進めているが、各ブランドのデザインや車両システムとの適合性を確保する必要がある。特に、メータークラスターの表示やエアコン・ラジオ操作など、車両の基本機能との統合には慎重な調整が求められる。

また、自動車メーカー側にも独自のインフォテインメントシステムを強化したいという思惑があり、Appleとの協力に慎重な姿勢を取るケースも考えられる。たとえば、GMは独自の車載システム強化を理由に、CarPlay非対応の新型EVを発表している。このように、次世代CarPlayの導入には技術面だけでなく、業界の勢力図の変化も影響を与えていると考えられる。

消費者のニーズと自動車メーカーの思惑が交錯する

Apple CarPlayの利用率は年々高まっており、特に米国では新車の98%以上がCarPlayに対応しているというデータが示すように、多くのドライバーが日常的にこの機能を活用している。

また、マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、EV購入者の30%、内燃機関車の購入者の35%が、CarPlayやAndroid Autoに対応していない車は購入対象外と考えている。このことから、スマートフォンとのシームレスな連携機能は、自動車の購買決定において重要な要素になっているといえる。

一方で、自動車メーカーはAppleやGoogleへの依存度を下げる方向へシフトしつつある。たとえば、GMは今後のEVモデルでGoogleのインフォテインメントシステムを標準搭載し、CarPlayやAndroid Autoの排除を進めると発表している。また、フォードやメルセデス・ベンツも独自のソフトウェア開発を強化しており、Appleが進める車両制御機能の拡張に対して一定の警戒心を持っていると考えられる。

こうした状況の中、次世代CarPlayが業界に与える影響はまだ見通しが立っていない。消費者のニーズを重視するメーカーはCarPlayを維持する可能性が高いが、Appleが車両システムに深く入り込むことで、従来の車載ソフトウェアの在り方が変わる可能性もある。Appleにとっては、自動車メーカーと協調しながらも、いかにCarPlayの独自性を保つかが課題となるだろう。

WWDCでの発表はあるのか 今後の展開に注目

次世代CarPlayの詳細が明らかになる場として、Appleの年次イベントWWDCが注目される。WWDCは開発者向けのイベントであり、毎年ソフトウェア関連の重要な発表が行われる。今年もiOSの新機能やMac関連のアップデートが発表されると予想されるが、CarPlayに関する新情報が含まれるかは不明である。

Appleは、今年初めに自動車メーカー向けの「コーディング」ビデオを公開し、新しいCarPlayシステムのレイアウトや機能を紹介している。その内容から、Appleが依然としてこのプロジェクトに力を入れていることは間違いない。しかし、現時点で自動車メーカー側からの具体的な対応モデル発表がないため、WWDCで新情報が公開されたとしても、すぐに市場に投入される可能性は低いと考えられる。

一方で、Appleがこれまでの沈黙を破り、正式なリリース時期や対応メーカーを明言すれば、次世代CarPlayの実現に向けた大きな一歩となるだろう。WWDCでの発表内容次第で、今後の自動車業界のスマートフォン連携の方向性が変わる可能性があるため、引き続き動向を注視したい。

Source:CarExpert