Appleは、iPhoneの売上が減少しても成長を続ける企業になれるのでしょうか。2025年第1四半期の決算発表では、iPhoneの売上がわずかに減少したものの、総収益は過去最高の1,243億ドルを記録しました。その背景には、サービス部門の成長やiPadの販売好調が大きく寄与しています。
しかし、Appleの収益の大部分を依然としてiPhoneが占めており、完全に依存から脱却したとは言えません。ストレージアップグレードの需要低下など、iPhoneの収益構造に変化が見られる中、AppleはMRヘッドセットやAI開発、サブスクリプション強化など、次の収益の柱を模索しています。
Appleの「ポストiPhone時代」は本当に到来するのか。それともiPhoneの黄金時代がまだ続くのか。最新の動向を基に、今後の展望を探ります。
Appleのサービス事業はどこまで成長できるのか

Appleの決算報告では、iPhoneの売上が減少した一方で、サービス部門が順調に拡大しています。2025年第1四半期のサービス部門の売上は263億ドルに達し、Apple全体の収益の約21%を占めました。この成長の背景には、Apple MusicやiCloud、Apple TV+、App Storeの手数料収入など、複数の収益源が影響しています。
特にサブスクリプション型のサービスは、継続的な収益を生む安定したビジネスモデルとして、Appleの戦略の中心となりつつあります。
しかし、サービス部門の成長には課題もあります。Appleのエコシステムに依存しているため、iPhoneの販売が低迷すると、新規ユーザーの獲得が難しくなります。また、規制の影響も無視できません。EUをはじめとする各国の規制当局は、App Storeの手数料や独占的なアプリ配信モデルに対して圧力を強めており、今後の収益構造に影響を与える可能性があります。
それでもAppleは、Apple TV+のオリジナルコンテンツ拡充や、新たなクラウドサービスの展開など、サービス部門のさらなる強化を進めています。今後、この分野がどこまで成長し、iPhone依存をどの程度緩和できるのかが注目されます。
iPhoneの収益モデルに変化 大容量ストレージはもう不要?
これまでAppleは、iPhoneのストレージアップグレードを重要な収益源のひとつとしてきました。特に上位モデルでは、容量ごとに価格を大きく引き上げる戦略が取られており、これがiPhoneの高収益化に大きく貢献していました。しかし、最近の調査では、多くのユーザーが大容量ストレージモデルを選ばなくなっていることが指摘されています。
この変化の要因として、クラウドサービスの普及が挙げられます。iCloudをはじめとするオンラインストレージが充実し、音楽や動画もストリーミングが主流になったことで、ローカルストレージへの依存度が下がっています。加えて、iPhoneの基本ストレージが増加し、標準モデルでも十分な容量が確保できるようになったことも影響していると考えられます。
この傾向が続けば、Appleはストレージアップグレードによる収益を補うために、別の方法を模索する必要が出てきます。例えば、クラウドストレージのサブスクリプションを強化することで、ユーザーの月額課金を増やす戦略が考えられます。また、ソフトウェアやサービスの付加価値を高め、ハードウェア以外の収益源を拡大する動きが加速する可能性もあります。
AppleはiPhone後の未来をどう描くのか
Appleは、iPhone以降の未来を見据えた新技術の開発を進めています。その代表例が、混合現実(MR)ヘッドセット「Apple Vision Pro」です。これは、ARとVRを組み合わせた次世代デバイスとして、エンターテインメントや仕事の在り方を変える可能性を秘めています。Appleはこの分野に多額の投資を行っており、今後の成長を牽引する新たな製品カテゴリーとして位置付けています。
また、人工知能(AI)分野への取り組みも本格化しています。iOSやmacOSの進化とともに、Appleは独自のAI技術を組み込み、ユーザー体験を向上させる方向に進んでいます。Siriの高度化や、オンデバイスAIによるプライバシーを重視した機能強化が進められており、今後のApple製品の魅力を高める要素となるでしょう。
Appleは現在、iPhoneを中心としたビジネスモデルを維持しつつ、新たな技術分野へと進出しています。しかし、これらの技術が次の「iPhone級」の成功を収めるかどうかは未知数です。過去の成功に甘んじることなく、新たなデバイスやサービスを生み出し続けられるかが、今後のAppleの成長を左右するポイントとなるでしょう。
Source:Macworld