次世代スマートフォン「Galaxy S25 Ultra」に搭載されるSnapdragon 8 Gen 4チップは、iPhone 16 Proに使われるA18 Proチップに比べて大幅に高価であることが明らかになった。

Snapdragon 8 Gen 4の価格は、最大で240ドルに達するとされ、これはA18 Proチップの価格45ドルに対して4〜5倍のコスト差となる。高価格の背景には、TSMCの3nm製造プロセスや新たに導入されたQualcomm独自のCPUコア開発が影響している。

Snapdragon 8 Gen 4チップのコスト急上昇

Galaxy S25 Ultraに搭載されるSnapdragon 8 Gen 4チップは、そのコストが前モデルから大幅に上昇している。Snapdragon 8 Gen 3が200ドルだったのに対し、Snapdragon 8 Gen 4は240ドルに達する見込みだ。これは約20%の値上がりを意味し、次世代スマートフォンの価格にも影響を与える可能性が高い。

この価格上昇の大きな要因は、TSMCが採用している3nmプロセスによる製造コストの増加である。具体的には、使用されるシリコンウェハーの価格が大幅に上昇し、1枚あたりのコストが1万5000ドルから3万ドルへと倍増している。このコスト増を吸収するために、チップの価格が引き上げられていると考えられている。

さらに、Snapdragon 8 Gen 4ではQualcommが初めて独自のCPUコアを採用している。この新技術の開発コストもまた、チップ全体の価格上昇に寄与している。QualcommがArmのCortexコアをライセンスせず、自社開発したことが、この技術的挑戦の裏には高いコストが伴うことを示している。

Apple A18 Proチップとの価格比較

Snapdragon 8 Gen 4チップの価格が240ドルに達する一方で、iPhone 16 Proに搭載されるApple A18 Proチップはわずか45ドルである。これにより、両者の価格差は4〜5倍にもなる。この違いは、AppleとQualcommのビジネスモデルの違いに起因している。

AppleはTSMCで製造されたチップを自社製品にのみ使用しており、中間業者を通さずに直接コストを吸収している。一方、Qualcommは外部のメーカーにチップを販売し、そのためには利益を確保する必要がある。結果として、QualcommのチップはAppleのチップに比べて高価になるのだ。

さらに、TSMCがApple向けに製造しているA18 Proチップは、3nmプロセスを使用しているにもかかわらず、コストが抑えられている。これはAppleの長年にわたる交渉力と、TSMCとの強固なパートナーシップが大きく影響していると見られる。

チップ価格上昇の背景にある製造プロセスの変化

Snapdragon 8 Gen 4の価格が上昇した理由として挙げられるのは、TSMCが採用している3nmプロセスの製造コスト増加である。特に、第二世代の3nmプロセス「N3E」は、高精度な製造が求められるため、シリコンウェハーの価格が従来の倍以上に跳ね上がった。

この技術革新により、チップの性能向上が期待される一方で、製造コストの増加は避けられない。新しいプロセスによるチップは、より効率的な電力消費と高い処理能力を実現するが、その開発には巨額の資金が投じられている。これは最終的に消費者に転嫁される形となり、次世代スマートフォンの価格上昇を招く可能性が高い。

一方で、同じ3nmプロセスを採用している他のメーカーも影響を受けている。MediaTekのDimensity 9400チップもまた、TSMCのN3Eプロセスを使用しているが、その価格は155ドルに抑えられている。この価格差は、各メーカーのビジネスモデルや技術力、交渉力の違いに由来している。

今後のスマートフォン市場への影響

チップの価格上昇は、今後のスマートフォン市場に大きな影響を与えると予想される。特に、ハイエンドモデルのスマートフォンは、搭載されるチップの価格がそのまま端末の販売価格に反映される可能性が高い。これは、消費者にとって高価な選択肢しか残らない状況を生み出しかねない。

また、チップ価格の上昇は、スマートフォンメーカーの利益率にも直接影響を与える。製造コストが高騰すれば、メーカーは販売価格を引き上げるか、利益率を削って競争力を維持するかの選択を迫られる。これにより、業界全体が価格競争から品質競争へとシフトする可能性がある。

さらに、TSMCの3nmプロセスを採用するメーカーが増えれば、シリコンウェハーの供給不足が起こり得る。これが価格上昇をさらに加速させる要因となり、今後のスマートフォン市場は不安定な状況に陥るかもしれない。