Appleはかつて1種類のiPhoneモデルのみを販売していたが、現在は毎年4種類のフラッグシップモデルを提供し、さらにiPhone SEや旧モデルも販売している。この多様なラインナップの中で最も売れているのは「ベースモデルクラス」であり、その販売比率は全体の42%を占める。この数字は、ProやPro Maxの合計販売数に匹敵するが、理由は単純ではない。

ベースモデルクラスには複数の選択肢があり、ユーザーに手頃な価格と幅広い選択肢を提供している点が大きい。一方で、個別モデルで見るとPro Maxが最も人気が高いことが示されている。この売上データは、Appleがターゲット層に応じた戦略を展開し、多様なニーズを満たしていることを象徴している。

ベースモデルの販売数が突出する理由とは

iPhoneの売上分析データを提供したCIRPによると、2024年におけるベースモデルの販売比率は42%である。この数字が突出している理由には、Appleが戦略的に複数の価格帯でベースモデルを展開している点が挙げられる。現在、Appleの公式ストアで購入可能なベースモデルは、iPhone 16、iPhone 15、そしてiPhone 14といった複数の世代にわたる。これにより、幅広い層にアクセス可能な状況を作り出している。

また、これらのモデルは手頃な価格に加え、性能と価格のバランスが良い点も消費者に支持される要因である。一方、Proシリーズが最新モデルのみに限定されるのに対し、ベースモデルの選択肢が広いことが販売比率に直接影響を及ぼしている。この柔軟性こそがAppleの売上構造を支える重要な要素といえるだろう。

しかし、販売数が多いことが必ずしも利益率の高さを意味しない点には注意が必要だ。Appleの全体戦略を考えると、ベースモデルの普及はエコシステム拡大やサービス契約の増加といった他の収益源と密接に関連していると考えられる。


Pro Maxが最も人気の個別モデルである理由

CIRPのデータは、個別モデルとして最も売れているのがPro Maxであることを示している。この背景には、Pro Maxが提供する付加価値がある。大画面、カメラ性能の向上、バッテリー持続時間の長さといった特徴は、多くのユーザーにとって魅力的な要素となっている。特に写真撮影や動画制作を重視するユーザー層に支持されており、その価格帯にもかかわらず堅実な販売実績を記録している。

さらに、Appleが最新モデルでのみPro Maxを展開することで、その希少性とブランド価値を高めている点も見逃せない。この「選択肢の制限」は、消費者心理に影響を与え、より高額なモデルへの移行を促しているといえる。

ただし、Pro Maxが全体の販売比率で26%にとどまるのは、価格が他モデルに比べて高いことによるハードルが影響している可能性がある。一方で、Pro Maxが高い利益率を誇る点を踏まえれば、このモデルがAppleの収益戦略において重要な位置を占めていることは間違いない。


Plusモデルが苦戦する理由と今後の展望

iPhone Plusモデルの売上比率は13%と、他モデルと比較して大きく引き離されている。この理由の一つには、価格設定と製品コンセプトの曖昧さが挙げられる。ベースモデルに近い価格帯でありながら、Proシリーズほどの性能を持たない点が中途半端な印象を与えている可能性がある。

また、PlusモデルはベースモデルとProシリーズの間で存在感が薄く、明確なターゲット層を見いだせていないと言える。多くのユーザーが価格対性能比を考慮した際、より手頃なベースモデルか、性能を重視したProシリーズを選択する傾向が強いことがCIRPのデータからも読み取れる。

今後、Appleがこのカテゴリーをどのように再定義し、消費者に訴求するかが注目される。例えば、バッテリー性能の特化や新しい付加機能を加えることで、他モデルとの差別化を図る余地があるだろう。AppleがPlusモデルを単なる「大きいベースモデル」以上の価値を持つ製品へと進化させることができるかどうかが鍵となる。