韓国では、古いiPhoneのカメラが注目を集め、若者の間で新たなトレンドになっています。最新のスマートフォンが進化を続ける中、あえて古いiPhoneを使用するスタイルが拡大しており、一部のモデルの中古価格が上昇する現象も見られます。

このムーブメントは「ヤングトロ(Youngtro)」と呼ばれ、「ヤング(Young)」と「レトロ(Retro)」を組み合わせた造語です。特にミレニアル世代やZ世代の間で人気を博し、K-POPスターがSNSで古いデバイスを使用した写真を投稿することで、さらなる広がりを見せています。写真の質感や色合いに独特の魅力があることが、最新技術とは異なる価値として受け入れられているのが特徴です。

古いiPhoneのカメラが生み出す独特の質感と魅力

古いiPhoneのカメラが注目される理由のひとつは、その独特の質感にあります。iPhone 4やiPhone 6Sなどの旧モデルは、現在のスマートフォンとは異なるカメラセンサーを搭載しており、これが写真の雰囲気を決定づけています。例えば、iPhone 6Sは1200万画素のシングルカメラを採用しており、最新のマルチカメラシステムとは異なり、より自然でノスタルジックな色合いを生み出します。

また、ノイズや粒状感が適度に残ることが、フィルムカメラのような雰囲気を作り出す要因になっています。特に、低照度の環境では最新のiPhoneのAI補正とは異なる、やや荒々しいが味わいのある写真が撮影できます。このような「完璧ではない美しさ」が、若者の間で新鮮に映り、あえて古いデバイスを選ぶ理由のひとつとなっています。

さらに、古いiPhoneのカメラアプリはシンプルな操作性を持っているため、フィルターを使わずともヴィンテージ感のある写真が手軽に撮影できます。新しいモデルでは、AIによる補正が強く、自然な写真を撮るには設定を調整する必要がありますが、旧モデルは撮影するだけで独特の雰囲気を得られるのが魅力です。

デジタル回帰の波がもたらす「本物志向」のトレンド

この古いiPhoneの人気と同様に、デジタルカメラや有線イヤホンなど、過去の技術が再評価される現象が広がっています。例えば、かつて廃れかけたコンパクトデジタルカメラが韓国で再び注目され、その価格が急騰しています。これは、スマートフォンのフィルターやアプリによる加工ではなく、「本物のレトロな写真を撮りたい」というニーズの高まりによるものです。

この流れは写真だけにとどまらず、音楽の聴き方にも影響を与えています。有線イヤホンの人気が復活し、ワイヤレスイヤホンが主流の中で、K-POPスターたちが有線イヤホンを使用する姿をSNSで公開したことで、ファッションアイテムとしても再評価されています。これは、単なるノスタルジーではなく、音質や操作性といった実用的な面も含めた選択肢としての復権といえます。

また、従来は利便性を重視してデジタル化が進められてきましたが、逆に「手間をかけること」が価値とされる風潮が生まれつつあります。例えば、フィルムカメラやアナログレコードの人気が再燃した背景には、「デジタルにはない体験を楽しむ」という考え方があります。古いiPhoneのカメラも、最新技術による補正を排除し、自分で構図や光の当たり方を工夫することに楽しさを見出す傾向が強まっています。

ヴィンテージiPhone市場の拡大と今後の可能性

こうしたトレンドの影響を受け、古いiPhoneの価格が上昇しています。韓国の中古市場では、特定のモデルが「ヴィンテージiPhone」として扱われるようになり、特にスティーブ・ジョブズ時代のデザインを持つモデルは、コレクターズアイテムとしての価値が高まっています。

iPhone 6SやiPhone SE(第1世代)は、そのコンパクトさとクラシックなデザインが評価され、若者の間で人気が再燃しています。一部のモデルは、新品同様の状態であれば、発売当時よりも高値で取引されることもあるようです。特に、未開封の状態で保管されていたものはプレミア価格が付くことがあり、こうした動向は今後も続く可能性があります。

一方で、Appleは今後のiPhone SEシリーズに大幅なカメラアップグレードを予定していると報じられています。これが市場に与える影響は未知数ですが、現行のiPhone SE(第3世代)がコレクターズアイテムとしての価値を持つ可能性も考えられます。今後、新旧のデバイスがどのように評価されるのか、その動向が注目されています。

Source:Digital Trends