Appleは、Vision Proの廉価版モデルに向けて低解像度ディスプレイを採用する可能性が報じられている。現行モデルの4K解像度を大きく下回る仕様で、製造コストの削減を目指しているという。
この廉価版には、従来の機能削減やデザイン変更も含まれる可能性があるが、現段階では開発の初期段階にあるとされている。量産化にはまだ数年を要する見通しだ。
Vision Proの廉価版、解像度を大幅に削減
Appleは、次世代のVision Proにおいて、解像度を大幅に削減した廉価版を開発している可能性が浮上している。現在のVision Proは「各眼に4K」とされる高解像度を誇るが、廉価版ではこれよりもはるかに低い解像度を採用する見込みである。報道によれば、日本ディスプレイから提供されたOLEDディスプレイの試作品は、1,500ピクセル毎インチ(PPI)の密度を持っている。これは、現行モデルの3,391 PPIと比べて大幅なスペックダウンを意味する。
解像度の削減は、製造コストの抑制につながるとされている。Appleはこれにより、より多くのユーザー層にリーチし、市場シェアを拡大する狙いがあるようだ。ディスプレイの解像度以外にも、コスト削減を目的とした設計変更が他にも行われる可能性が高い。
解像度の引き下げは、ビジュアル面での影響が懸念されるものの、一般的なユーザーにとっては視覚体験を損なわないレベルにとどめることが可能とされている。Appleは、技術的な妥協を行いながらも、高品質な視覚体験を提供する方策を模索していると考えられる。
OLEDディスプレイ技術とコスト削減の可能性
廉価版Vision Proでは、ディスプレイ技術の変化が大きなコスト削減要因となると見られている。現行モデルで採用されている「OLED-on-Silicon」(OLEDoS)技術に代わり、廉価版にはガラスコア基板(GCS)を使用したOLEDディスプレイが導入される可能性が高い。この技術は、ディスプレイ製造においてコストを抑えることができ、廉価版モデルの製品価格引き下げに貢献するものと期待されている。
Appleは、Samsung DisplayやLG Displayを含む複数のディスプレイメーカーに対し、ピクセル密度が1,700 PPI程度のOLEDディスプレイの情報を求めていたことが過去に報じられている。これにより、同社が異なる技術オプションを探っていることが明らかになった。
ディスプレイ技術の進化は、ユーザー体験を維持しつつ、製造コストの削減を目指すための重要な要素である。今後もAppleは、さらなる技術的進展を通じて、市場競争力を高めるための最適なディスプレイ技術を採用していくと予測される。
機能削減とデザイン変更の可能性
廉価版Vision Proでは、コストを削減するために、いくつかの主要機能が削減される可能性がある。特に、「EyeSight」機能が取り除かれる可能性が報じられている。この機能は、使用者の目を表示することで周囲の人々に対してアプリ使用中か、もしくは没入型体験を行っているかを知らせる役割を持つが、廉価版では不要と判断される可能性がある。
また、デザイン面でも変化が予想される。廉価版では、より軽量な素材が使用されるとの報道があり、これによりデバイスのコストがさらに抑えられることになるだろう。さらに、廉価版はiPhoneやMacに接続して動作する仕様にすることで、独立した処理能力を省く方針も考慮されている。この設計変更により、ヘッドセット自体の価格を抑えることができる。
Appleは、このような機能削減とデザインの簡素化により、ユーザーの負担を減らしつつ、主要な体験要素を維持するバランスを模索していると考えられる。
競争激化するディスプレイ市場、製品化は数年後か
廉価版Vision Proの製品化は、今後数年を要する見込みである。DigiTimesによれば、低コストモデルの開発はまだ初期段階にあり、量産体制に入るまでには2〜3年かかるとされている。当初予測されていた2025年後半の発売スケジュールよりも遅れる可能性が高い。
一方、Appleのディスプレイ調達に関しては、激しい競争が予想される。韓国、日本、台湾のメーカーが、Appleの大規模なディスプレイ注文を獲得するために競い合っている。特に、サムスンやLG、そして日本ディスプレイといった主要メーカーは、低コストOLEDディスプレイを提供することで、Appleとの契約を目指している。
このディスプレイ市場の競争激化は、Appleが最も費用対効果の高い技術を採用できるようにするための重要な要素となるだろう。競争の中で新たな技術が登場する可能性もあり、最終的に廉価版Vision Proが市場に投入される際には、より進化したディスプレイ技術が採用される可能性も否定できない。