AppleがiPhone SEの改良版を投入する計画を進めている一方で、旧モデルを値下げして販売し続けるという選択肢を取らない方針が議論を呼んでいる。これにより、iPhoneを選択肢として検討していたAndroidユーザーを逃し、Appleのエコシステム拡大の機会を失う可能性がある。

さらに、新型iPhone SEはモダンなデザインやスペックの強化が予定されており、価格上昇も予想される。この戦略はハイエンド市場での競争力を維持する意図と見られるが、手頃な価格の選択肢を求めるユーザー層へのアプローチが欠けているとの指摘が出ている。

旧モデルの継続販売は発展途上市場や低価格帯スマートフォンが主流の地域での市場拡大に寄与する可能性があったが、Appleがこの道を選ばなかった背景には何があるのだろうか。

Appleが旧モデルを活用しない背景にある判断とは

Mark Gurman氏が指摘するように、Appleは現行のiPhone SEモデルを値下げして販売し続けるという選択肢を採用しない意向を示している。これは、同社の従来の製品サイクル戦略と一致しており、新製品の発売と同時に旧モデルを段階的に市場から撤退させる手法を取ってきたためである。しかし、今回のケースではその決定が批判を呼んでいる。

Appleが旧モデルを継続販売しない理由として、新型iPhone SEが従来モデルから大幅に進化している点が挙げられる。iPhone 14に似たデザインや、エッジからエッジまでのディスプレイ、AIの動作に必要な8GBのRAM搭載などが予定されており、消費者に対する製品イメージの一貫性を保つため、旧モデルの販売がAppleの戦略と合わない可能性がある。

一方で、手頃な価格帯で旧モデルを販売し続ければ、Androidユーザーや低価格スマートフォン市場の消費者を取り込む機会があったとする意見も根強い。特に、急成長中のアジア市場や中南米市場では、価格競争力のある製品が求められる中、Appleが市場シェア拡大のチャンスを見過ごしているのではないかという懸念がある。


プレミアム戦略の成功とその影響

Appleは近年、ハイエンド製品に注力してきた。たとえば、Apple Vision Proの発表はその象徴であり、拡張現実ヘッドセット市場への参入を示したが、3,499ドルという価格設定が一部市場では受け入れられず、生産縮小の報道もあった。この背景には、製品開発の進化とともに高価格帯への移行がAppleブランドを維持するための戦略として採用されていることが挙げられる。

しかし、同時に手頃な価格の製品が不足しているという批判も存在する。iPhone SEは、比較的低価格でiOSエコシステムへのエントリーポイントとしての役割を担っていたが、新型モデルが値上げされる見込みであることが、消費者に与える影響は少なくない。特に、スマートフォンをステータスシンボルとして選ぶ裕福ではない消費者にとって、手の届かない存在になりかねない。

このような状況下で、Appleがいかにして高価格戦略と市場拡大のバランスを取るのかが注目される。現状では、プレミアム路線を重視しつつも、消費者のニーズや価格帯への配慮が欠けているとする意見が業界内外で広がっている。


Androidユーザーの取り込み失敗が示す今後の課題

AndroidからiPhoneへ乗り換える消費者は、手頃な価格や魅力的な仕様がきっかけとなることが多い。しかし、Appleが新型iPhone SEの投入と同時に旧モデルを市場から撤退させることで、このような乗り換え需要を自ら減少させるリスクを抱えている。特に、価格が購入の大きな要素となる地域では、iPhone SEの役割が重要だった。

さらに、旧モデルの性能は依然として十分な競争力を持ち、iOSのエコシステムに新規ユーザーを取り込む手段として有効であることを考えると、Appleがこの手段を選ばなかったことは戦略的な判断と言える。だが、それが市場全体にどのような影響を与えるのか、長期的な視点での検証が必要である。

Appleの今後の市場戦略では、プレミアム製品とエントリーモデルの両方をバランス良く展開する必要があるだろう。特に、価格に敏感な市場へのアプローチがAppleにとって鍵となる。市場拡大の可能性を広げるためには、柔軟な価格設定や旧モデルの活用が再検討されるべきではないだろうか。

Source:PhoneArena