Appleは昨年、AIを活用した「Apple Intelligence」機能を発表しましたが、当初は英語のみの対応でした。その後、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、南アフリカ、イギリス向けにローカライズされた英語バージョンが追加されました。そして今回、さらに多くの言語に対応する準備を進めています。

AppleのAIスイート「Apple Intelligence」は、今後フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、日本語、韓国語、簡体字中国語に対応する予定です。さらに、インドとシンガポール向けのローカライズされた英語バージョンも追加されます。

Apple Intelligenceの多言語対応が意味するものとは

Appleが「Apple Intelligence」の多言語対応を進める背景には、単なる利便性の向上だけではなく、AI活用のさらなる発展を見据えた戦略があると考えられます。英語圏以外の市場でもAI機能を展開することで、より多くのユーザーがAppleのAIエコシステムに触れる機会が増え、AIのトレーニングデータの多様性が向上します。

特に、日本語や韓国語、中国語のような非ラテン文字圏の言語に対応することは、自然言語処理技術の向上に直結します。これまで英語ベースのAIアシスタントは多くありましたが、複雑な文法を持つ言語に適応することは技術的な課題でした。Appleがこれを突破できれば、Siriやその他のAI機能がより高度な理解力を持つ可能性が高まります。

また、Apple Intelligenceの多言語対応は、Googleの「Gemini」やOpenAIの「ChatGPT」など、競合するAIアシスタントに対抗する狙いもあると考えられます。これらのAIはすでに多言語対応を進めており、Appleが後れを取るわけにはいきません。

特に、日本や韓国などの市場では、AIの活用が進んでいるため、対応の遅れがシェア低下につながる可能性もあります。Appleが今後、どこまでAIの精度を向上させられるのかが注目されます。


iPhoneのAI機能、Macとの違いと規制の影響

Apple Intelligenceの展開において、MacBookではすでにAI機能が利用できるにもかかわらず、iPhoneやiPadでは規制の影響で展開が遅れている点が注目されています。この違いは、主に欧州の「デジタル市場法(DMA)」の影響によるものです。

DMAは、大手IT企業が独占的な市場支配を強めることを防ぐための法律であり、Appleのような企業にとっては厳しい制約をもたらします。特に、iPhoneやiPadのようなモバイルデバイスに関しては、アプリの配布やプライバシーの取り扱いに関する厳格なルールが適用されるため、Appleは慎重に対応せざるを得ません。

そのため、MacBookにはすでにAI機能が搭載されているものの、iPhoneやiPadでは正式な展開が遅れているのです。

しかし、Appleは4月以降、iPhone向けにもApple Intelligenceを導入する予定です。これにより、MacとiPhoneの間でAI機能がよりシームレスに統合される可能性があります。特に、Siriの進化が期待されており、デバイス間の連携が強化されれば、より直感的なAI体験が実現するでしょう。

一方で、規制の影響がどの程度残るのかも注視する必要があります。DMAに適応する形での展開になるため、競合他社のAIアシスタントと比べて制限が生じる可能性もあるでしょう。


Siriの進化は本当に期待できるのか

AppleがAI機能の強化を進める中で、特に注目されるのがSiriのアップデートです。iPhone 16シリーズでは、Siriの新機能が大きな特徴の一つとされていましたが、現時点では従来のSiriと大きな違いは感じられません。ユーザーが期待しているのは、より自然な会話ができるAIアシスタントですが、Appleはこの期待に応えられるのでしょうか。

現在、Googleの「Gemini」やOpenAIの「ChatGPT」など、より高度な対話が可能なAIが市場に登場しており、Siriの進化はそれらと比較されることになります。例えば、GeminiはAndroidとiOSの両方で利用でき、自然言語処理の精度も高いと評価されています。また、ChatGPTはプラグインやカスタマイズ機能が充実しており、汎用性の高さが強みです。

Appleはこれまでプライバシーを重視する姿勢を取っており、それがAIの機能制限にもつながっていました。しかし、今後のSiriの進化においては、プライバシー保護と高度なAI機能のバランスをどのように取るかが鍵となります。Siriが本当に進化し、競争力を持つアシスタントへと成長できるのか、4月以降のアップデートが大きな試金石となるでしょう。

Source:PhoneArena