Appleのスマートフォン市場における成長が鈍化している。
四半期決算の発表を控える中、AppleはAI戦略の遅れと中国メーカーの台頭によって、iPhoneの需要低迷に直面している。GoogleやSamsungがAI機能を強化する中、Appleは最新のiPhone 16シリーズにおいてAI機能をほぼ搭載しておらず、一部のAIサービスも今年後半に限定的に提供される見通しだ。
さらに、中国市場ではHuaweiをはじめとする現地メーカーがAppleのシェアを奪い、2024年第4四半期にはAppleの中国市場シェアが10ポイント減少するなど、厳しい状況が浮き彫りとなった。
加えて、ドル高の影響によりAppleの海外売上にも逆風が吹いている。市場予測では2024年第1四半期の売上成長率が3.8%と低迷し、前年同期の6.1%を大きく下回る見込みだ。Appleがこの困難をどう乗り越えるのか、今後の戦略が注目される。
AI競争で後れを取るAppleの課題と戦略
Appleは、GoogleやSamsungが積極的に展開するAI機能の分野で後れを取っている。GoogleのPixelシリーズは、生成AI「Gemini」を活用した高度な音声認識や写真編集機能を搭載し、Samsungも最新のGalaxy S24シリーズで「Galaxy AI」を前面に押し出している。一方、Appleは2024年のWWDC(世界開発者会議)でAI関連の発表が期待されているものの、現時点ではiPhoneへの本格導入が遅れている。
特に、AppleのAIアシスタントであるSiriは、GoogleアシスタントやChatGPTのような高度な対話機能を持たず、ユーザー体験の面で見劣りしている。さらに、Appleが開発していたニュース要約AIツールが不正確な見出しを生成したため、BBCなどのメディアから批判を受け、提供を中止する事態に陥った。この問題は、AppleのAI技術がまだ発展途上であることを示唆している。
しかし、Appleは独自のAI戦略を模索していると考えられる。同社は、デバイス内でAI処理を行う「オンデバイスAI」の開発を進めており、プライバシーを重視する姿勢を貫いている。また、Aシリーズチップの進化により、機械学習の処理能力が向上しており、次世代のiPhoneでは本格的なAI機能が搭載される可能性もある。AppleがどのようにAI競争に巻き返しを図るのか、今後の展開に注目が集まる。
中国市場でのシェア低下とHuaweiの復活
Appleにとって、中国市場の動向は無視できない。2024年第4四半期のデータによると、Appleの中国市場におけるシェアは17%に低下し、前年同期比で10ポイントも減少した。一方、Huaweiは独自のチップ「Kirin」を搭載した「Mate 60 Pro」を投入し、国内市場での競争力を取り戻しつつある。米国の制裁で一時は苦境に立たされていたHuaweiだが、半導体技術の開発を進めることで復活を遂げた形だ。
さらに、中国政府の政策もAppleにとって逆風となっている。政府は国内消費を促進するためにスマートフォン購入者向けの補助金制度を導入したが、対象は800ドル以下の端末に限定されている。そのため、iPhoneのような高価格帯のスマートフォンは補助金の恩恵を受けることができず、中国メーカーのシェア拡大を後押しする要因となっている。
Appleはこれまで、中国市場を最重要拠点の一つとして位置づけ、現地に工場を構えるなど供給網の強化を図ってきた。しかし、HuaweiだけでなくXiaomiやOPPO、Vivoなどの中国ブランドが次々とハイエンド市場に参入し、iPhoneの優位性が揺らいでいる。今後、Appleが中国市場での巻き返しを図るには、価格戦略の見直しや独自のAI機能の強化が不可欠となるだろう。
ドル高と米国経済の影響 Appleの売上に及ぶ圧力
Appleの売上は、米ドルの為替相場によって大きく影響を受ける。2024年第4四半期には、米ドルが対ユーロや円で約8%上昇し、Appleの海外売上にとって逆風となった。特に、日本や欧州の消費者にとって、円安やユーロ安によるiPhoneの値上がりは購入意欲を下げる要因となっている。
また、米国経済の不確実性もAppleの業績に影響を与える可能性がある。市場では、ドナルド・トランプ前大統領が再び関税政策を強化するとの観測が広がっており、これがAppleの中国生産ラインに打撃を与える可能性が指摘されている。もし新たな関税が課されれば、AppleはiPhoneの価格を引き上げるか、利益率を削るかの選択を迫られるだろう。
しかし、Appleの強みはハードウェアだけでなく、サービス部門の成長にもある。2024年第1四半期には、Appleのサービス部門の売上が12.9%増加する見込みであり、これはApp StoreやApple Music、iCloudといった定額制サービスの好調によるものだ。今後、Appleが為替リスクをどのように乗り越え、サービス事業を成長の柱とするかが、同社の収益構造を左右するポイントとなる。
Source:Republic World