かつてはコストパフォーマンスが重視されていたスマートフォン市場ですが、2024年にはその流れが大きく変わりました。高機能なAIの搭載やプレミアムデザインが評価され、消費者の関心はハイエンドモデルへとシフト。
これを象徴するのが、2024年の世界で最も売れたスマートフォンランキングで、トップ10のうち半数以上をAppleのiPhoneが占める結果となりました。特にiPhone 15シリーズは圧倒的な人気を誇り、iPhone 15が1位、iPhone 15 Pro Maxが2位、iPhone 15 Proが3位にランクインする快挙を達成しました。
さらに、史上初めて「Pro」モデルの販売比率が過半数を超えるという大きな変化も起こりました。これにより、多くのユーザーがカメラ性能やAI機能、ProMotionディスプレイなどのハイエンド仕様を求めていることが明確になりました。加えて、旧モデルのiPhone 14も依然として人気があり、8位にランクインするなど、Appleのスマートフォン全体が安定した支持を集めています。
Appleは、下取りプログラムや分割払いオプションを拡充し、高級モデルをより手の届きやすいものにする戦略を進めています。特に新興市場での成長が顕著で、2024年第4四半期にはインドのスマートフォン市場で初めてトップ5入りを果たしました。
Proモデルの人気が示すスマートフォン市場の変化
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iPhone 15シリーズが販売ランキングを席巻する中で、最も注目すべき点は「Pro」モデルの人気が飛躍的に向上したことです。これまでiPhoneの販売を牽引していたのは無印モデルや「Plus」シリーズでしたが、2024年はiPhone 15 Pro MaxやiPhone 15 Proが上位を占め、ついにProシリーズが主力モデルとなりました。この変化は、スマートフォン市場全体がハイエンド志向に移行していることを象徴しています。
特にiPhone 15 Pro Maxは、これまでの標準モデルとは一線を画す特徴を備えていました。チタン素材を採用することで軽量化と耐久性を両立し、Apple初となる「5倍光学ズーム」を実現。これらのハードウェアの進化が、写真撮影や動画撮影を重視するユーザーに高く評価されました。
さらに、A17 Proチップの搭載により、ゲームや映像編集などの処理性能も飛躍的に向上し、日常使いからプロ用途まで幅広いニーズに応えるデバイスとなりました。
一方で、このProモデルの人気上昇は、スマートフォンの価格帯にも影響を及ぼしています。従来、プレミアムスマートフォンは一部のハイエンドユーザー向けとされていましたが、Appleの下取りプログラムや分割払いオプションの普及により、より多くの人がProモデルを手にする機会を得ました。
結果として、Proシリーズの販売比率が過半数を超え、スマートフォン市場における「プレミアム化」の流れがより一層強まったといえます。
サムスンの躍進とAI機能の影響
AppleがProシリーズの成功で市場を席巻する一方で、Samsungも2024年に大きな成果を上げました。ランキングのトップ10にはSamsungのデバイスが6機種も入り、前年よりも存在感を増しています。特にミッドレンジのGalaxy A15 5GやA05などが好調で、コストパフォーマンスの高いモデルが広く受け入れられたことがうかがえます。
しかし、それ以上に注目されたのは、SamsungのフラッグシップモデルであるGalaxy S24 Ultraのランクインです。
このGalaxy S24 Ultraは、2018年以来、SamsungのSシリーズとして初めてトップ10入りを果たしたモデルであり、AI機能の強化がその成功を後押ししました。「Circle to Search(円を描いて検索)」やAI翻訳機能、スマートノート作成機能などが搭載され、単なる高性能スマートフォンではなく、AIを活用した利便性の向上が評価されたと考えられます。
また、Appleもこの流れを無視することはできませんでした。2024年後半には「Apple Intelligence」というAI機能を発表し、AIを活用したスマート体験の提供を試みました。しかし、その影響は限定的で、Samsungが先行して提供したAI機能のインパクトには及ばなかったとされています。このことから、今後のスマートフォン市場において、AI機能の進化がユーザーの購入判断に大きく影響することは間違いないでしょう。
AI搭載スマートフォンの未来と進化の方向性
2024年のスマートフォン市場で明確になったのは、AI機能が主要なトレンドとなりつつあるという点です。販売ランキングに入ったデバイスのうち、5機種には生成AI機能が搭載されており、これが消費者の関心を引きつける大きな要素となりました。AppleとSamsungがそれぞれ異なるアプローチでAIを強化する中、今後の市場ではAI機能の競争がさらに激化すると考えられます。
AppleはOpenAIとの提携を深め、Siriを含むiOS全体のAI機能を強化する計画を進めています。一方でSamsungはGoogleと連携し、「Galaxy AI」プラットフォームを構築。特にAndroidデバイスでは、GoogleのAI技術を活用した独自の機能が増えつつあります。これにより、スマートフォンのAIは単なるアシスタント機能にとどまらず、日常のあらゆるシーンで活躍する存在へと進化する可能性が高まっています。
また、ハードウェアの進化もAIの発展に貢献すると考えられます。AI処理専用のNPU(ニューラルプロセッシングユニット)が今後のスマートフォンに標準搭載されることで、より高度なリアルタイム処理が可能になり、音声アシスタントの精度向上やカメラの自動補正機能の向上が期待されています。
今後数年の間に、スマートフォンは「AIが標準搭載されるデバイス」へと変化し、従来の使い方が大きく変わる時代が訪れるかもしれません。
Source:Techloy